【エタノール転用の拡大続く】
エタノール業界は2010〜2011年度のトウモロコシ生産量の37%(47億ブッシェル)を消費する見通しだ。昨年は35%、10年前はわずか6%だった。5年前に政府が通常燃料にバイオ燃料を使用することを義務づけたことがきっかけで使用比率の急激な増加が始まった。業界はエタノールへの転用は輸入石油への依存を軽減し、飼料等の用途減少はDDG(乾燥蒸留カス)に形を変えて還元されていると弁明している。しかし畜産アナリストは、家畜飼料に使われるDDGは一部で、配合率が35%を超えると飼料の栄養や効果に影響が出ると指摘する。
【転用拡大の影響】
エタノール生産の増加で、トウモロコシ全体における飼料および工業仕向けの割合が急減している。2000〜2001年の飼料仕向けは58%、2年後は最高の62%を占めたが、その後減少して2010〜2011年度は42%の予想だ。エタノール用とはまだ5%の開きがあるが、今後はそれも縮まるとアナリストは見ている。ちなみに2006〜2007年度は飼料は53%、エタノールはわずか20%だった。
トウモロコシ生産者はこれに対応して収穫高を増やしてきたが、それでも2005年以来トウモロコシ価格は大幅に値上がりしている。米国農務省(USDA)が、10月に発表した収穫高予想126億6,400万ブッシェルは、9月発表の予測値を4%下回り、今年も需要が供給を上回る模様だ。
【肉牛はDDGの38%を消費】
エタノール業界は農業との連携を強調し、再生可能燃料協会(RFA)は、エタノールは農家が生産する穀物の新たな市場を提供し、効率と収穫量を高める「永続的なパートナーシップ」と呼んでいる。2009年度にはバイオ精製所で38億ブッシェルのトウモロコシが加工され、エタノール106億ガロンと「高価値の飼料、蒸留穀物、トウモロコシグルテン飼料/ミール」3,040万トンが生産された。後者は国内のフィードロットで牛に与える穀物の総量に匹敵すると協会は説明している。しかし、肉牛肥育で消費されるDDGは全量の38%だ。また近年はDDGの輸出も急増して、2010〜2011年度は過去最多の900万トンに達する見込みだ。
【DDGはトウモロコシ1ブッシェルの43%に相当】
DDGはトウモロコシより20〜40%安価でエネルギーは30%多く、家畜生産者にとっては重要な飼料源になる。しかし専門家は、DDGはトウモロコシ1ブッシェルの価値の43%に過ぎないと言う。その上エタノール生産はコーンベルト6州に集中して米国全体の68%を占め、DDGを求めて牛が集まっている。特にアイオワではフィードロット内肉牛頭数が前年比で10〜15%増加している。反対にカンザス、テキサスはそれぞれ収容可能頭数の3.7%と2.1%に止まっている。
DDGの難点は、水分を含んでいるため、在庫管理に注意する必要があることだ。DDGには通常の飼料より多いプロテインとリンが含まれているので、家畜の糞尿処理の問題もある。運搬する飼料の量が増えれば運送料も増える。DDGは硫黄が多く、この点でも注意が必要だ。
※2010年11月8日 Cattle Buyers Weekly
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