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トウモロコシ高騰の影響広がる |
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【ミート価格の値上がりを帳消し】
米国の食肉価格は、食肉の供給不足や国内外の需要回復もあって昨年比で急上昇している。小売りやフードサービスの売上高も、不況前のレベルには及ばないが復調の兆しが見える。
輸出はドル安、新興市場の伸び、主要商品カテゴリーにおける商品不足などの後押しを受けて堅調が続いている。価格が上昇すると生産者のマージン増加、増産、値下げになる。通常ならその流れで畜産の増大に弾みがつくと期待されるが、実際には最近の穀物価格の急騰で家畜生産者の業績は一年前より低下している。業界の利益率の大まかな指標として、トウモロコシ価格に対する卸売価格の比率が使われるが、トウモロコシ価格が肉牛、成豚、家禽卸売価格より早いペースで上昇すると、生産者のマージンは下がる傾向にある。
※2010年10月11日 NPBニュース
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【トウモロコシ高値で市場に変化】
牛の出荷を保留してさらに増体できる素牛農家(cow-calf producer)や子牛育成農家(backgrounder)は、この先2011年に入っても優位に牛を売れるだろう。減産などからトウモロコシが値上がりし、肥育業者は牛が400ポンドから700、900ポンドに増体するのを待って出荷するようになる。その結果、牛の所有権を仕上げ期まで保持する子取り農家(cow-calf operator)が増えるだろう。
トウモロコシの高値に加えて見過ごせない市場要因は、全般的な肉牛頭数の減少だ。この傾向は、2012年か2013年まで変わらないと見るエコノミストもいる。頭数を抑えれば肥育牛価格にはプラスだが、トウモロコシ価格の高騰で利益は今年前半の見通しほど良くはない。
さらに市場に影響する国内外の牛肉需要はプラスとマイナスの効果がある。ドル安で需要が高まり輸出は増えるが、国内では失業率が下がらず、所得減少の影響が大きいビーフ需要は低迷している。
※2010年10月19日 Progressive Farmer
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【USDA予測に揺れる穀物市場】
穀物市場は最近2年、不安定な状態が続いていたが、特にここ10日間はトウモロコシの先物相場が70セントも上下する異常な展開を見せた。その原因となった米国農務省(USDA)が発表した最新のトウモロコシ推定収穫量(9割は収穫済み)は、1エーカー当たりわずか155.8ブッシェルで、全体で5億ブッシェル少ない。加えて飼料としての使用量を1億5,000万ブッシェル増やしている。
また、期首在庫には年初の収穫分や品質不良分が含まれ、実際の数字はもっと低いという指摘や、輸出はドル安が高値を相殺すること、中国の需要高の噂など、トウモロコシ価格に有利な要素が見られる。
※2010年10月11日 NPBニュース
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【畜産業界、トウモロコシ高値を負担】
カンザス州立大のエコノミスト、フェウス氏は「エタノール業界は今年と来年は拡大を義務づけられているので、価格は供給量を制限する要因にはならない。畜産業界がトウモロコシの高値を負担することになる。予想されるフィードロットの増体コストは100ポンド当たり75ドルから85ドルに上昇している。今後トウモロコシの値上がりが続き大豆と耕作面積を争うことになると、トウモロコシ価格は1ブッシェル6ドルを優に上回り、増体コストは1ポンド当たり90ドル台を超えるだろう。春に向けた生体牛先物市場は導入頭数減少を見込んで上昇したが、今の景気では、トウモロコシの更なる高値や現在の価格さえも支えられない。それ故、高騰が続けば肥育牛価格は今の割引価格より更に下がる」と述べている。
※2010年10月18日 Cattle Buyers Weekly
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EPA 新規車両のエタノール配合率15%認める |
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米国環境保護庁(EPA)が先頃、2007年以降に生産された車両用燃料のエタノール配合率を、現在の10%から15%(E15)へ引き上げることを承認した。これにより、トウモロコシ価格はさらに値上がりそうだ。EPAの決定は以前から予想されていたが、「食料か燃料か」の議論が再燃し、食品業界団体から批難が起きている。連合側は「E15により、燃料生産に使われるトウモロコシの量が劇的に増加する」と述べている。全面的に施行されると、米国で収穫されるトウモロコシの40%以上がエタノール生産に転用され、現在のトウモロコシ価格高騰が加速するのは必至だ
E15、作業時のほこり規制などこうした政府の規則は、特に肉牛生産者にとって厳しい状況を生み、今後も肉牛頭数減少が続くだろう。
※2010年10月18日 Cattle Buyers Weekly |
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不安定市場で、頭数拡大を思いとどまる |
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USDAが提案している販売に関する規則や、トウモロコシの高値などの不安材料を理由に、生産者は頭数の拡大計画をやむなく断念している。頭数は過去15年のうち12年で減少している。成豚頭数は2007年に急増したが、トウモロコシの異常高値で赤字を出した2008年に減少した。赤字は2009年まで続き、生産者は成豚頭数を大幅にカットした。それにより今年前半には黒字回復し、頭数の抑制を検討している。
飼料用トウモロコシの不足で、今後も牛、豚の頭数減少は続くと思われるが、それはトウモロコシのエタノール転用を支持する政府の農政の大きな欠点だとアナリストは指摘している。
そうしたなか、9月のフィードロット導入頭数は前年同月を上回り、今年9ヵ月のうち6ヵ月で導入頭数が増えた。現在、今年5月、6月に多数導入した牛の出荷が始まっている。
※2010年10月18日 Cattle Buyers Weekly |