国内外の牛肉需要に対して十分すぎる出荷可能牛の供給があり、6月1週にはボックスビーフの値下がりを受けて生体牛も値下がりした。週末の牛肉売り上げ不振のしわ寄せで、週明けから生体牛先物相場の下落が続いた。2週火曜日の6月契約分は初めて80ドルを割り込み、昨年6月27日の115.30ドルを36ドルも下回った。肥育牛先物相場も影響を受けて、終値は日間限度のマイナス300ポイントで引けた。コーンベルトの肥育業者は積極的に売りに出て、ネブラスカで4万4,537頭、アイオワ南部ミネソタは1万4,248頭、カンザスでは5,300頭が取引された。
トウモロコシ価格は昨年比で26%安になっているが、採算割れにならない価格で肉牛をフィードロットに導入するには、肥育牛価格はまだ高すぎる。18ヵ月連続の赤字を抱えて、肥育業者は高値で牛の入れ替えを行っている。原因はフィードロットの大幅な過剰生産と肉牛確保の過当競争だ。肥育業者は「肥育牛価格が今までと今後の赤字を考慮して調整されていないという今の状況は前例がない。業者は牛を導入したいので、誰もが多少の頭数を買い入れるために、価格が上がってしまっている」と述べている。
肥育牛は頭数が減少しているため優位にあり、飼育規模を大幅に縮小しない限り、肥育牛価格は下がらないだろう。過剰生産能力は500万頭分と推定され、生産と供給のバランスを適正化するにはかなり時間がかかりそうだ。
家畜マーケティング情報センター(LMIC)によると、今年上半期の処理頭数は昨年を5%下回る模様だ。頭数にして70万頭で、1週間分の総処理頭数に匹敵する。一方下半期は、昨年比での落ち込みは若干少なく、前半より1%増加すると予測されている。酪農牛の調整分が肉牛処理頭数の年間減少を上回ると、後半の増加はもっと大幅になるかもしれない。また枝肉重量はこのまま年末まで昨年を上回る状況が続く見込みだ。
今年上半期の牛肉生産量は、昨年同期比で3%減が予想される。出荷可能牛の頭数は年内はこのまま昨年を下回る状況が続きそうだが、枝肉重量が昨年を上回るため、下半期の牛肉生産量は1〜3%増産になりそうだ。また年後半には、4月にフィードロットに導入された大量の軽量級の肉牛が市場に出荷される。そのため国内外の牛肉需要の回復がさらに重要となる。引き続き牛肉需要と価格動向が、生体牛価格決定の有力な要因だ。
地球温暖化防止に向け、「キャップ&トレード」という制度に注目が集まっている。この制度では、まず業界や企業の温暖化ガス排出量に行政機関が上限(キャップ)を設け、一定の削減を確保する。目標より多く減らした企業が、その分を排出権として、目標に達しない企業と取引(トレード)できるようにする。すでにEUや各国・地域で実施・検討されている。現在CO2は1トン2ドルで売買されているが、アナリストの多くが、2020年までには20ドル、2050年までには100ドルに迫ると推測している。
農業関連のメディアでは最近、不耕起栽培*を実施してCO2を大気から除く取り組みが盛んに論じられている。計算上、不耕起農業への移行で年間300〜900キログラム、耕作地から森林への転換で9トンのCO2が抑えられる。
農地を耕さず作物を栽培する。農業機械の使用が減り、ガソリンなどの化石燃料の消費減少でCO2の発生が減る。
エネルギー生産業界や運輸業界が、大量の電気使用によるコスト上昇分を消費者に転嫁すれば、農業にも打撃を与えることになる。専門家の試算ではCO2・1トン20ドルベースで、トウモロコシ生産のエネルギー関連投入コストは1エーカー当たり約40ドル増加する。エネルギー消費が少ない作物もあるが、全体では数十億ドル単位のコスト増になると考えたほうがよい。
このような変化が、今後は経済全体の改変につながるかもしれない。少なくともこれまでとは全く異なる、高コストのエネルギー供給体制になると覚悟する必要があるだろう。
報道によれば米国とロシアは、米国食肉処理施設に対するロシアの禁輸措置決定がより慎重に行われるよう、協定を検討している。ロシアは、残留物や輸出許可証の有無を理由にたびたび米国食肉工場に禁輸措置をとり、輸入を中断している。最近では新型インフルエンザ(A/H1N1)に対する懸念を理由に、米国の複数の州からの食肉輸入を全て禁止した。先日のOIE総会時に別個に検討された提案では、ロシアはまず90日間の調査期間を設けて調査結果を検証し、正式な措置をとるという。
米国農務省(USDA)は最新のLivestock Outlookレポートで、成豚価格は今月には持ち直すだろうと楽観的な見通しをしている。しかし、実際は収益確保には程遠い状況だ。米国農務省経済調査局(ERS)は、新型インフルエンザと4月の価格低迷を受けて第2四半期の成豚価格を下方修正したが、6月には5月の安値から回復すると見ている。しかし、需要の低下で豚赤身肉市場は100ポンド当たり5ドル落ち込み、「回復」という診断は誤診だとエコノミストは述べている。
新型インフルエンザ騒動では、「豚インフルエンザ」という誤った呼称が原因で、豚肉の需要と価格は大幅に落ち込んだ。疾病予防管理センター(CDC)等の保健機関が「ウイルスの拡大は人から人への感染によるもので、豚との接触や豚肉製品を食べたことが原因ではない」と強調しているが、消費者は豚肉製品を敬遠している。
さらに追い打ちをかけるように、飼料用穀物と大豆ミールは値上がりしている。中西部では春先の多雨で種まきが遅れ、7月先物相場はトウモロコシが1ブッシェル当たり45セント、大豆ミールは1トン当たり57ドル上がった。飼料の値上がりと成豚の値下がりで、生産者の赤字(1頭当たり)は4月の5ドルから25ドルに増えた。
豚肉価格の決定には生産者の損益だけでなく、トウモロコシ・大豆価格の動きも影響するので、今のペースで飼料の値上がりが続くと、生産者が黒字を維持するには成豚価格は上げる必要がある。肉豚生産者は世界的金融危機、不安定な輸出市場、飼料・投入原価の高値、そしてインフルエンザという四重苦の打撃を受けている。
国際獣疫事務局(OIE)が加盟国を対象に実施した調査で、世界的な気候変動が家畜疾病の発生に悪影響を与えていることが分かった。OIEは「気候変化が自国で発生する家畜疾病の引き金になっていると報告する加盟国は増える一方だ。OIEは各国の担当機関が問題に対応できるよう、国際基準を満たす体制整備を支援する必要がある。気候変動による影響の度合いは断定できないが、特にブルータング病、西ナイル熱、リフトバレー熱など、生物が媒介する疾病の発生件数増加と発生地域の広がりが確認されている」と述べている。