牛肉需要が最も高くなる春は、パッカーにとって年間で一番の稼ぎ時だ。第2四半期に利益を上げ、その勢いが第3四半期まで続き、反対に第1四半期は収益確保に苦戦する-というのが例年のパターンで、最近は第4四半期に大幅な赤字を出している。
今年も、こうした年間の傾向が繰り返されそうだ。今のところパッカーマージンは黒字を保っている。生体牛とボックスビーフの価格の開きを、例年より上手く管理しているのが一因だ。この状態で、生体牛価格が6〜10ドル値上がりする第4四半期を乗り切れるかもしれない。また今年後半には、国内外の牛肉需要が十分に回復して、生体牛の高値をほぼ相殺できる牛肉価格が可能になることも考えられる。皮革、獣脂などの副産物の価格の動きも影響するだろう。
4月は出荷可能牛と処理頭数が昨年を下回ったため、各地のフィードロットの出荷頭数は昨年比でおよそ5%減少した。しかしフィードロットでは、肉牛の体重の大幅な減少もあり、牛の入れ替えは進んでいる。出荷頭数は、昨年4月が過去最高だったこともあり、今年は前年比では減少しているが、最近5年の平均値を上回っている。トウモロコシの高値が見込まれ(農務省予測)、肥育事業の赤字が続いているため、5月は別として、この先数ヵ月、導入頭数は低めに抑えられるだろう。
一方、5月1日付フィードロット内頭数は昨年比3%減で、13ヵ月連続の前年割れになったが、減少幅は昨年4月以来最も少ない。導入頭数は前年比で4.2%増加したが、体重600ポンド以下の牛が22.2%(4月度10年平均は19.5%)を占め、次に軽量の600〜699ポンド級も昨年より多かった。そのため、「今回の導入牛の多くは9〜10月頃までは出荷されず、8月出荷頭数は当初の予測より少ないおそれもある」とアナリストは見ている。
欧州議会の加盟国は、クローン動物から生産された食品の導入を、法律で禁止することに合意した。欧州食品安全機関(EFSA)からは、「クローン動物由来の食肉・乳製品を食べても、人の健康に影響がない」という、米国食品医薬品局(FDA)と同様の評価報告書が出されていた。しかし、今回食品の新製品認可手続きの見直しが行われ、議会の過半数がクローン動物由来の製品の販売は禁止すべきという意見で一致した。
クローン動物は死亡率・疾病罹患率が高く、動物愛護の面などに問題がある。
食品マーケティング協会(FMI)の一部門である、SQFI(Safe Quality Food Institute)は、食品安全に関するウェブサイトを開設した。このサイトは、サプライヤー・小売りバイヤー・監査員・認可団体・トレーニング機関・コンサルタントなどユーザー別に分類されていて、それぞれカテゴリー別のウェブページで情報や利用可能な各種サービスを得ることができる。また40を超えるガイダンス(指針書)、条例の紹介や各種申請・登録用書式もリストアップされている。
ホームページのURLは以下の通り。
■URL:www.sqfi.com
米国農務省(USDA)の月間畜産報告書によると、4月度の米国食肉生産量は前年比で5%減少し40億8,000万ポンドだった。いずれも前年比で、牛肉は5%減の21億3,000万ポンド、豚肉も同じく5%減の19億2,000万ポンドだった。今年1〜4月の商業用食肉生産量は3%減の162億ポンドで、牛肉は3%減少、豚肉は4%減少した。
米国とEUは5月2週、成長促進ホルモン剤を使った米国産牛肉の禁輸措置をめぐる貿易紛争で、暫定合意に達した。米国はEU製品への関税拡大を見送り、EUは米国産牛肉のEU市場へのアクセスを拡大する。これで1980年代から続く紛争案件が、解決に向けて前進した。これまでEUは、ホルモン剤を含まない米国産牛肉(年間1万1,500トン)を20%の関税で輸入を認めていた。今後はフェーズ1として、それとは別に今後3年間毎年2万トンの免税枠を設ける。双方の合意があればフェーズ2に進み、4年目は輸入枠を4万5,000トンに拡大し、米国はEU製品の関税撤廃を追加する。フェーズ2期限終了までに、両国は合意の期間延長を検討する。
これまでは牛レバーを中心にバラエティーミートが好調だった中東市場で、最近は良質な米国産牛肉に人気が集まっている。今年の第1四半期、マッスルカットの輸出量は前年同期比で84%、輸出高は40%以上も伸びた。USMEFによると、最近ドバイやサウジアラビアなどで、高品質の米国産牛肉の利用が、ホテルやレストラン等の業務用から一般の小売市場へと拡大しているのが好調の一因だという。
5月24日から29日にかけてパリで開催されたOIE総会に、日本・EUを始め150ヵ国から約700人の政府・団体関係者が参加した。今年はOIE設立85周年に当たり、11ヵ国から大臣クラスの来賓も見られた。冒頭の挨拶で、オニール議長は「一つの世界、一つの健康」をテーマとして、科学的根拠に基づいた家畜衛生、疾病、基準などの統一を呼びかけた。
また、世界的に感染が広がっている新型インフルエンザ(A/H1N1)について、一部の国による非科学的で誤った対応を指摘し、各国に冷静かつ科学的な対応を求めると同時に、天候や環境の変化が及ぼす家畜衛生、疾病影響への世界的取り組みの重要性を訴えた。
今回の総会では、BSEに関するリスクレベルの分類で、日本は「BSEのリスク管理ができている国」としてOIEの承認を得た。また、OIEガイドラインの修正案が審議され、BSE関連では無条件リストに記載されていた骨なし牛肉の自由交易条件中の「30ヵ月齢以下に限定する」という条項の削除について、2日間という異例の長さでの議論が行われた。議長団からは、この提案は総会で数年かけて議論し尽くしたものであり、それを踏まえて審議してほしいという強い要請があった。この修正案は、賛成80ヵ国、反対35ヵ国、棄権2ヵ国で承認された。