世界的に牛肉需要が伸びている一方で、主要牛肉生産国では肉牛頭数が減少し、世界的な牛肉の供給薄が起きている。主に干ばつと穀物の値上がりの影響で頭数拡大が進んでいない。そのため、今年の世界全体の牛肉生産量は、よくても昨年並だろう。中国、ロシアなどでは、所得の増加に伴い高額商品の購入も進んでいる。しかし、こうした市場の好機を生かせず牛肉は供給薄で、各国で豚肉・鶏肉の消費が拡大する可能性がある。米国が牛肉需要の伸びに乗じることができるかどうかは、価格、供給状況、韓国や日本の輸入再開に掛かっている。
現在、多くの外国通貨に対してドル安が続いているが、米国産牛肉の供給(生産+輸入-輸出)は減少すると見られる。韓国・日本向け輸出が本格化すると、米国内では1人当たりの供給量の減少、牛肉価格の上昇、総供給量に対する販売量の増加が予想される。今後の市場動向の最重要ポイントは、この先米国や他の国々で景気後退が進むかどうかだ。その状況によっては豚肉・鶏肉の消費が一層増加するだろう。
EUは、1月31日に発効した新たな輸入条件に基づいて、ブラジルの牛肉加工施設の承認手続きを進めている。しかし、EU側は約300施設と想定していたが、ブラジルからは約2,600ヵ所のリストが提出されたため、輸入開始が遅れている。ブラジル輸出業者協会会長は「今回の停止措置で雇用を含め影響はあるが、ブラジルは世界184ヵ国に牛肉を輸出しており、EUは輸出量で21%、輸出額では31%の割合ということで、壊滅状態にはならない」と述べている。JBS社は「これでヨーロッパの牛肉価格が上昇すると、弊社のアルゼンチン、オーストラリア、米国の事業にはプラスになるし、本来EU向けの在庫は国内市場で消化できる」とコメントしている。
米国農務省(USDA)は2009年度予算のなかで、連邦政府が査察対象施設に課する新たな手数料(9,600万ドル)の承認を議会に要請する予定だ。それとは別に、食品安全検査局(FSIS)の総予算は前年より2,200万ドルアップの110億ドルを提案している。予算書では、サルモネラ、リステリア、O157:H7(腸管出血性大腸菌)各々について、検査結果の数値目標を設定している。食品供給の安全・保安強化のためには、予算を前年より8,100万ドル増額して調査研究・監視体制を拡充する。
また同省の食肉家畜研究センター(ネブラスカ州)は、蒸留カス(エタノール生産の副産物)を肉牛の飼料に使用すると、大腸菌O157の度合いが増すかどうか研究を進めている。現在300頭を蒸留カス4割配合の飼料で飼育し、トウモロコシのみで飼育されている肉牛と比較している。すでに実施済みのカンサス州立大学の研究では、大腸菌O157のレベルが倍増すると関連づけているが、ネブラスカ大学の研究では、配合率1〜2割では、トウモロコシのみの場合より大腸菌の数値は低くなっている。USDAの研究結果は今年後半に出される。
同社は2月5日、食品サプライヤーを対象に、食品安全管理のグローバル規格であるGFSI*(Global Food Safety Initiative)を採用すると発表した。施設ごとに食品安全の慣行をリアルタイムで詳細に把握することができ、現在食品医薬品局(FDA)やUSDAが義務づけている監査プロセス以上に徹底したプログラムだ。自社開発のPBブランドと一部生鮮食品の納入業者は、第三者的機関で訓練、認証、免許を受けた監査官の監査を受ける。欧米ではすでに大手小売企業が導入を決定し開始している。
アンガスビーフ協会は、トヨタ・アメリカのレクサスが特徴としている「プレミアム・クオリティー」をテーマに、車と料理を連動した富裕層対象の販促イベント"Taste of Lexus"を、昨年末全米14都市で実施した。招待された既存のレクサスオーナー・見込み客は、レクサス・ラウンジと呼ぶ会場で、試乗、プレゼンテーション、レストラン(3ヵ所)での食事を楽しんだ。メニューには、アンガスビーフ協会認定の2オンス・ミニバーガーが披露された。このイベントで消費者5万人、レクサス販売担当者1万1千人を動員した。
カナダ統計局は、「この5年間でカナダ産バイソンミートの輸出が倍増した」と発表した。その背景には、世界的に「バイソンミートはヘルシーで、牛肉などの従来からの蛋白源に比べ、よりナチュラル」という消費者意識がある。バイソンは牧草地で放牧され、肉は低カロリー・低脂肪、一方蛋白質・鉄分が豊富というメリットがある。輸出量は2001年の93万9,000キロから、2006年は207万5,000キロに増加した。農業統計によると、バイソン飼育農家数も2006年は約2,000軒で、1991年の6.5倍に達している。