米国農務省(USDA)は11月度「農業価格報告書」で、11月の飼料費は前年比で21%上昇したと報じた。まぐさと干し草の安値も、完全飼料、補足飼料、飼料穀類、濃縮食品の高値で相殺されて、10月度比では4%上昇した。いずれも前年比では、大豆は55%、トウモロコシは21%の値上がり、成豚は14%安、全肉牛は6%高だった。
生体牛が安定した取引を見せる中、年末の需要期を控えているにもかかわらず、感謝祭祝日で生産量が減ったことを受けてボックスビーフは値を上げた(チョイスカットアウトが3.36ドル高)。しかし値上がりの勢いは11月29日には失速した。カットアウト価格は12月上旬2〜3週間でさらに数ドル下がり、12月下旬まで回復しそうにないとアナリストは述べている。
先物相場より高値の現金取引に続き肥育業者は通常より早めに売買を開始して、11月最終週の主要市場では活発な取引があった。いずれも95ドル台で、水曜日にはテキサスとカンザスでは4万300頭、ネブラスカは5万4,700頭、翌木曜日は3州合計で3,800頭が売買された。
JBS USAのネブラスカ工場で火災があり、3日間操業停止となったが、その後生産量を挽回したことで、11月最終週の処理頭数は67万7,000頭だった。パッカーがチョイス価格を押し上げたため、チョイスとセレクトの値開きが、今年最大の15.73ドルに広がった。しかしその後バイヤーの抵抗にあい、チョイスは1.46ドル値下がり、終値は149.88ドルだった。
肥育業者が急ピッチでフィードロットに牛を送り込んでいるため、フィードロットは急激に膨れあがっている。小麦の高値で冬季放牧用の小麦牧草が不足したため、導入頭数は今年前半は少なかったが、その後大量に増えた。そのため、フィードロット内頭数は来年初頭には過去最多になるだろう。また第1四半期の導入頭数も前年を上回り、来年初めは出荷可能牛が増加しそうだ。
アナリスト達は、春先に向け積極的に出荷して在庫の増大を防ぐべきだと、今から警告している。しかし牛のだぶつきはパッカーにとっては朗報だ。この先45〜60日間は、時期的に出荷可能牛が供給不足になる。牛の出荷が増える3月には、韓国や日本向け輸出プロトコル(手順、規則)が緩和されるかもしれない。2008年の牛肉生産量は2007年比で2%の増加が予想されている。その増加分をさばくには、パッカー、肥育業者ともに輸出が頼りになるだろう。
USDAは、全米肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)と協力して、全国家畜個体識別制度(NAIS)の一環として、肉牛関連施設の登録を促進する。また疾病発生後48時間以内に、十分なトレースフォワード(さかのぼって調べる)およびトレースバックデータを集めるという、NAISの長期目標を達成するため、家畜疾病トレーサビリティーを推進する事業計画も近く発表する意向だ。この体制が整えば、家畜保健関係者が疾病発生源を突き止めて、他の施設や肉牛への悪影響を防ぐことが可能になる。
NCBA側は、雑誌「National Cattlemen」、TV番組「Cattlemen to Cattlemen」、ラジオなどの印刷・放送媒体を活用してNAISのPRに努める。また個別コンタクトやトレードショー、ウェブサイトを通じて、会員・非会員を含む25万9,000社の生産者対象の啓蒙活動を進める。
NAISは施設登録・家畜識別・トレーシング(追跡調査)の3つの要素で構成される。施設登録により、疾病発生時には全国的コミュニケーションネットワークが機能する。これまでに42万6,671施設が登録済み。
韓国政府は、牛肉輸入の拡大を懸念する農家に配慮して、2004年に制定された全国的な肉牛・牛肉トラッキング制度を拡充する。新システムでは、家畜の出生地、出生年月日をはじめ、牧場からの移動、売買、食肉処理など、食肉流通の全般的動きを追跡する。これまではBSEの発生が報じられると、原産地が不明のため、国産・輸入にかかわらず牛肉全体で買い控えが起きていた。
米国当局者によると、数ヵ月にわたる交渉の結果、米国とロシアは米国産牛肉輸入に向けた市場開放でほぼ合意に達した模様だ。これまではBSEに対する懸念のため、2003年以来、基本的にロシア市場は閉ざされていた。その後2006年11月にロシアは輸入規則を緩和したが、面倒な制約事項が残り、牛肉輸入はごく少量に留まった。(2007年1〜9月合計で輸入量265トン、輸入額82万4,000ドル)
今年5月に国際獣疫事務局(OIE)が全月齢の米国産牛肉を「管理されたリスク」で輸入向けに安全と認定したことから、米国はロシアに全面開放を強く求めていた。米ドル安の利点もあり、タイミング的にも良い。現在ロシア国内は所得の上向きでより良質な牛肉の需要が伸びて、ブラジル、アルゼンチン、オーストラリアが輸出拡大の恩恵を受けている。
ブラジルからの輸入は、一部の州で口蹄病が発生し一時的に停止していたが、ワクチン接種の実施で感染の心配がなくなり、2008年1月1日より、8州からの牛肉、豚肉、鶏肉の輸入を受け入れる。同じタイミングでブラジル産食肉専用の品質表制度の実施が始まる。
ここ数年アメリカを始めヨーロッパでの動物愛護運動が社会的に注目を浴びてきている。これは単にペットへの虐待行為に対する問題提起というレベルを超え、いわゆる家畜生産の分野までにも影響を及ぼしてきている。米国ではこれまで長きに渡って、家畜のストレス、怪我防止のため施設設計の段階から配慮している場合も少なくない。例えば、最近では養豚者が広く利用するPQA(豚肉品質向上プログラム)に動物愛護を考慮し、飼育・肥育段階における養豚管理に際しての注意事項を盛り込んだPQAプラスが導入され、残留薬物の管理などの技術的向上も含め、消費者の信頼を高める努力がなされている。今後もこの流れは社会的話題として米国、ヨーロッパでは定着するものと見られる。