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vol.54 コラム 肉の栄養学 第1回「鉄」

肉の栄養学 第1回 鉄

現代人に不足しがちな栄養素である「鉄」。
効果的に摂取するカギはアメリカン・ビーフにありました。

赤身肉に含まれる鉄で貧血予防!

鉄は若い女性、妊婦、成長期の子どもに積極的に摂ってほしい栄養素。それにも関わらず「慢性的に摂取量が足りていないのが現状です」と女子栄養大学の川端輝江教授は言う。

「鉄は、身体に必要な栄養を送り届ける血液の中にあるヘモグロビンの原料となります。月経中の女性や妊婦は必要量が多いので積極的に摂っていただきたいのですが、効果的な摂取方法を知らない方が多いです。特に若い女性はダイエットという観点から、野菜や海藻から摂取しようとしますが、実は赤身牛肉などから摂る方が吸収率が高く、より効果的。鉄を多く含むアメリカン・ビーフは、代謝アップをサポートするタンパク質も鉄と一緒に摂れるため、美容やダイエットにも効果的な食材です」

今回は鉄の知識、食事での効率的な摂取について話を伺った。

Q1 鉄とは?
鉄は、赤血球中の「ヘモグロビン」や筋肉に含まれる「ミオグロビン」の構成要素として、身体中へ酸素を送り届ける役割を担う、私たちの身体にとって非常に重要な栄養素です。体内に存在する鉄の一部は、肝臓・脾臓(ひぞう)・骨髄などで貯蔵・再利用されていますが、鉄は汗をかくことなどで体外に排出されてしまうため、毎日一定量を補給する必要があります。
Q2 ヘム鉄と非ヘム鉄ってどう違うの?
食品に含まれている栄養素としての鉄は、肉や魚などの動物性食品に含まれる「ヘム鉄」と、穀物や野菜、豆腐などの植物性食品、鶏卵、乳製品に含まれる「非ヘム鉄」の2つに分けられます。ヘム鉄は小腸で優先的に吸収されるため、非ヘム鉄に比べ体内での吸収率が高いのが特徴です。より効率的に「鉄」を摂取するには、ヘム鉄を多く含む赤身の牛肉などの肉類を、食生活に取り入れることが効果的です。
ヘム鉄非ヘム鉄
牛赤身肉ひじき
牛ホルモンパセリ
豚レバー唐辛子
あさり青のり
Q3 鉄不足になるとどうなるの?
鉄不足からくる症状としてよく知られているのは、「鉄欠乏性貧血」です。血液中の鉄が不足すると、体内に酸素が十分に行き渡らなくなるため、貧血や疲労、免疫力の低下などのトラブルを引き起こす要因となります。めまいや立ちくらみがする、疲れやすい、疲れが取れない、頭痛が続く、冷えや肩こりがつらいなど感じる人は、鉄不足を疑ってみましょう。
Q4 鉄が特に不足しがちな人は?
現代人の鉄不足の大きな原因として、食生活に加え、その人の身体の状態や生活習慣による影響も挙げられます。女性の場合、月経時や妊娠時に鉄不足になりがちです。特に妊婦は胎児を育てるためにも絶対的な必要量が増えるので、より注意しなくてはなりません。身体を作るために多くの栄養や血液を必要とする成長期の子どもや、大量の汗と一緒に鉄を失う運動選手も、鉄不足になる恐れがあります。日常的な食生活において、意識して赤身肉を料理に取り入れるなど、鉄を多く含んだ食事を心がけることが大切です。
Q5 貧血予防にはレバー?赤身肉?
「貧血予防=レバー」と思われがちですが、実はレバーに含まれるビタミンAは、過剰摂取による頭痛や骨の弱化などの症状を引き起こす恐れがあります。また、レバーは調理のバリエーションが乏しいのも難点ですが、それに比べて、脂肪が少なく肉質が多い赤身の牛肉には、鉄の吸収率を上げるタンパク質が豊富に含まれており、効果的に鉄を補給できます。ステーキやローストビーフ、牛丼など、野菜とバランスよく組み合わせ美味しく鉄不足を予防しましょう。
Q6 鉄を効率よく摂取する方法は?

アメリカン・ビーフと和牛の肩ロースで鉄の含有量を比べてみると、下表のようにアメリカン・ビーフは和牛の2倍以上の鉄を含んでいます。加えて、アメリカン・ビーフはカロリーも和牛の約2/3で、摂取しにくい栄養素であるビタミンB12が多く含まれている点も優れています。鉄は、ビタミンCを多く含んだ野菜やクエン酸の多い果物と一緒に摂ると、より効果的に吸収できます。逆にコーヒーや緑茶、クルミなどのタンニンを含むものは鉄の吸収を妨げるので、食事中や食後すぐに摂ることは控えましょう。

アメリカン・ビーフと和牛の栄養比較
部位アメリカン・ビーフ
肩ロース
和牛
肩ロース
エネルギー(kcal)258411
タンパク質(g)17.813.8
脂質(g)20.837.4
ビタミンB12(ug)4.61.2
鉄(mg)1.60.7

※ともに肩ロース / 100gあたり
アメリカン・ビーフ:一般社団法人食肉科学技術研究所調べ
和牛:日本食品成分表(七訂)

女子栄養大学 基礎栄養学研究室 川端輝江教授

基礎栄養学のエキスパート。管理栄養士でもあり、基礎的な栄養素の分析、研究が専門。「鉄」「タンパク質」などの摂取方法やダイエットについて、わかりやすい一般向けの著書も多数。『しっかり学べる栄養学』(ナツメ社)、『いちばんやさしい栄養学 どうして野菜を食べなきゃいけないの?』(新星出版社)などがある。

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