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TRADER'S Be & Po

vol.317 Aug.27.2018
 
米国食肉輸出連合会
NEWS CONTENTS
トピックス 報復関税で食肉輸出に損失、日本はアクセスに課題
市況ニュース カットアウトは持ちこたえるも生体牛は続落
受給予測 生産量は牛肉・豚肉とも記録更新、牛肉輸出は
9%増予想
生産動向 牛群の拡大サイクル、2020年には終了
リテール 妊娠ストール不使用の生産者に限定―クローガー
ポーク関連ニュース 英政府、中国での豚コレラ発生でレポート公表
マーケット・データ 生体牛・豚価格、カットアウトバリュ、穀物先物価格
ファクト・シート ポーク(2018年6月)米国の輸出、
と畜頭数・枝肉生産量、飼養動向、日本の輸入量
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トピックス

報復関税で食肉輸出に損失、日本はアクセスに課題

 
 

今年上半期の米国の牛肉輸出は、量・額ともに記録を更新、豚肉輸出も前年を上回るペースだった。しかし中国とメキシコでの急激な関税引き上げに直面した豚肉は、両市場への輸出が停滞。USMEFによると、4月に新記録を更新した豚肉輸出量は、中国・香港地域向けが減少したことを主因に、5〜6月と2カ月連続で減少傾向にある。

また日本市場もアクセス面で大きな課題がある。日本は米国産牛肉の最大の市場であり、豚肉も輸出額をけん引する重要な市場だが、米国産牛肉・豚肉にかかる関税は他の主要輸出市場よりも大幅に高い。

USMEFのレポートによると、日本が米国の主要競合国と優先的な貿易協定(日豪EPA、TPP11、日欧EPA)を締結し、米国産牛肉・豚肉の関税率が他国よりも不利な状況が常態化すると、大きな輸出損失が発生すると分析している。

試算では、牛肉輸出額の損失は2023年までに5億5000万ドルに達し、2028年までに12億ドルを超え、日本の輸入牛肉に占める米国のシェアは現在の43%から2028年には30%に低下する可能性がある。日本向け豚肉輸出の年間損失額は、2023年に6億ドルを超え、2028年には10億2000万ドルを超えると予想される。豚一頭当たり換算の損失額は2023年には4.55ドル、2028年には7.06ドルに達する可能性があるとしている。

 

※2018年8月13日 CATTLE BUYERS WEEKLY

 
市況ニュース

カットアウトは持ちこたえるも生体牛は続落

 
 

米国産牛肉の総生産量は前年同期比3.4%増で推移しているものの、卸売価格は持ちこたえている。豚肉の総生産量は3.2%増、ブロイラーは同0.1%増だが、卸売価格の下落幅は牛肉よりも大きい。

現在、牛肉卸売価格は前年をわずかに下回る水準。7月最終週のビーフのカットアウト価格は総合で100ポンド当たり203.76ドル、前年同週比2.0%安。これに対してポークのカットアウト価格は同22.6%安、豚枝肉価格は同15%安。

6月の小売価格は、チョイスビーフの平均価格が100ポンド当たり5.98ドル、前年同月比3.7%安。牛肉全体では同1.2%安。豚肉の平均価格は1.6%安、鶏肉は0.5%高。賃金の上昇に伴い、牛肉の需要が堅調なことに加え、この価格差も牛肉以外の食肉の需要を圧迫しているようだ。

ビーフのカットアウト価格は、先週パッカーが在庫処分に動いたことでスポット市場では下落した。ここ数週間で蓄積されてきたエイジング製品の販売量が75ロード(≒コンテナ)を超えた。これは2016年7月中旬以降で最大。2016年の場合はトリミング(50CL)が主体だったが、今回は全て正肉だ。

ボックスビーフ全体の販売量は6874ロード、前年同週比5%増。アナリストは「エイジング製品を売りさばけたパッカーは、来週、再来週と唱え値を上げてきそうだ」と予想する。

生体牛の現金取引価格は低調だ。供給過多を防ぐために、肥育業者が十分な出荷を行っていないことが一因。先々週の主要5州の取引は6万3951頭。平均価格は生体牛が100ポンド当たり111.73ドル、枝肉は同176.22ドル。それぞれ前週比0.88ドル安、2.78ドル安だった。

 

※2018年8月6日 CATTLE BUYERS WEEKLY

 
受給予測

生産量は牛肉・豚肉とも記録更新、牛肉輸出は9%増予想

 
 

USDAが公表した世界農業需給予測における牛肉、豚肉、トウモロコシのポイントは以下のとおり。

【牛肉】2018年の推定牛肉生産量は1229万トン(前年比3.5%増)で、先月の予想値(3.7%増)より下方修正された。第3四半期の出荷が鈍化し、またと畜頭数における経産牛の比率増による枝肉重量の低下予想を反映した。2019年の推定生産量は、枝肉重量の増加予想により、1257万トン(同2.3%増)に上方修正された。2018・2019年ともに、生産量は史上最多記録を更新する予想だ。

牛肉輸出量の予想値は、2018年が9%増、2019年は2.6%増に上方修正された。生体去勢牛の平均価格(100ポンド当たり)は、2017年は121.52ドルだったが、2018年は116ドル、2019年は117.50ドルの予想。一人当たりの推定牛肉消費量は2017年の56.9ポンドから、2018年には0.87ポンド増の57.7ポンド(同1%増)、2019年はさらに1ポンド増の58.7ポンド(同2%増)になる見込み。

  米国の牛肉生産量の推移と予測/米国の牛肉生産量(四半期毎)
 

【豚肉】と畜ペースが予想より遅いことから、2018年の豚肉生産量を1212万トン(同4.4%増)に下方修正した。先月時点での予想は4.5%増。2019年は上半期にと畜頭数と重量の増加が予想されることから、1264万トン(同4.4%増)に上方修正。2018・2019年ともに史上最多記録を更新する見込み。

報復関税の発効にもかかわらず、豚肉の輸出量予想は2018年6%増、2019年2%増で先月時点から変更はない。2018年の豚肉輸出量は生産量増加分の30%を、2019年は同11%を吸収するとの予想だが、2017年に輸出が吸収した増加分は61%で、これが価格を支えた。

生体豚平均価格(100ポンド当たり)は2017年の50.48ドルから、2018年は44.50ドル、2019年は40.50ドルへと低下すると予想されている。一人当たりの推定豚肉消費量は2017年の50.1ポンドから2018年には1.6ポンド増の51.7ポンド(同3%増)、2019年は2.2ポンド増の53.9ポンド(同4%増)になる予想。

  豚肉生産量の推移と予測/米国の豚肉生産量(四半期毎)
 

【トウモロコシ】2017-18年度のトウモロコシ生産量は推定146億400万ブッシェル(同4%減)、輸出量は推定24億ブッシェル(同5%増)で史上2番目に多い。期末在庫量は推定20億2700万ブッシェル(同12%減)。平均出荷価格は、2016-17年度のブッシェル当り3.36ドルから、3.35〜3.45ドルに低下した。

2018-19年度の予想生産量は145億8600万ブッシェル(同0.1%減)と先月予想(3%減)から上方修正された。輸出量は23億5000万ブッシェル(同2%減)、飼料用およびその他の用途の仕向け量は55億2500万ブッシェル(同1%増)といずれも上方修正された。期末在庫は16億8400万ブッシェル(同17%減)、平均出荷価格は前年度比20セント安の3.10〜4.10ドルと予想されている。

 

※USMEF Weekly Update report

 
生産動向

牛群の拡大サイクル、2020年には終了

 
 

米国のキャトル・サイクルは、拡大から緩やかな成長へと移行する調整段階に入った。今後、群牛の増加率は小幅になり、2019年の牛肉生産量は小幅な増加に留まるだろう。家畜取引情報センターのアナリストは「現状が持続すると、全米の肉牛の構築は2020年に終わりを迎える可能性がある」という。

この数カ月間で発生した報復関税などの国際貿易環境の変化で、牛肉需要への影響も懸念されるが、現状では間接的な影響に限られ、第1四半期の輸出量は過去最高を記録して国内需要も経済が良好なことから、需要は順調に推移している。拡大基調が終わる兆候は供給サイドにある。

USDAの最新の牛飼養動向調査によると、繁殖用に保留された未経産牛頭数が前年を下回り、2018年の推定子牛生産頭数は前年比2%増にとどまった。牛群は今も拡大しているが、増加率は緩やかなペースになった。第1四半期のトレンドが持続すると、2019年1月1日時点で全米の子牛生産頭数の増加率は1%未満にとどまるだろう。

子牛生産頭数の増加は、2019年の牛肉生産量の増加を示しているが、未経産牛の保有率は牛群の拡大の減速を示唆する。未経産牛の保有率と未経産牛のと畜頭数のデータを合わせると、今後、牛群の拡大率は著しく鈍化することが見込まれる。

 

※2018年8月6日 CATTLE BUYERS WEEKLY

 
リテール

妊娠ストール不使用の生産者に限定―クローガー

 
 

全米最大のSMチェーン・クローガーは、豚肉の仕入れ先を母豚の妊娠ストール(妊娠中の母豚を単頭飼育する個別の檻)を使用しない生産者に限定する計画を発表した。同社の最新のサステナビリティレポートで、2025年までに販売する豚肉を全て、群飼または放し飼いを採用している生産者から仕入れることを目指すと明記した。

6年後の実現に向けて、同社は豚肉のサプライヤーに対し、妊娠ストールの使用から別の飼育方法への移行を迅速化するよう促しているが、サプライヤーの多くはすでに移行済か、実施へ向けた期限を設定しているという。

同社のレポートでは「分娩する母豚に妊娠ストールを使用することは、母豚の健康面に悪影響を与える。群飼は実現可能な代替手段だと認識している」としている。この動きは、活動家団体の圧力(7万2000人の署名請願書など)を受けたもの。シンナシティに本社を置く同グルーブは、35州で2779店舗を展開している。

 

※2018年8月13日 Meatingplace.com

 
ポーク関連ニュース

英政府、中国での豚コレラ発生でレポート公表

 
 

英国の動植物衛生庁(APHA)は、中国で発生したアフリカ豚コレラ(以下ASF)について分析したレポートを公表。英国への侵入リスクは2017年8月に設定した「低」で変わらないものの、生産者や旅行者に注意を喚起している。

同レポートによると、8月3日、中国北東部・遼寧地方でASFが発生したことを中国当局が発表。8月1日に47頭の豚に臨床兆候が確認されたが、農場の飼養頭数は明確になっていない。政府以外のレポートでは300〜8000頭と伝えられる。中国でASFが確認されたのは初めてで、感染あるいは感染が疑われる豚は殺処分の対策が取られている。

中国との国境から約1000km離れたロシア中部でも少数のASFが流行。 東ヨーロッパやロシア西部とは異なり、ロシア中部のASFの関する情報は不足している。FAOは、中国北東部から侵入した可能性が最も高いと結論付けた専門家の意見をもとにリスクアセスメントを実施しているが、今回は地理的に見て新たな広がりを表している。感染源は現在のところ不明。これが初発であるかどうかも不明である。

中国は発生地域で警戒監視を実施しているが、大型の商業用養豚場が中心で、小規模な農場や自営農家には及んでいない。小規模の農家は、ウイルスの侵入を防ぐ強力なバイオセキュリティーや高度な食品安全基準を実施する可能性は低い。野生のイノシシ群が多いことから、ウイルスが持続、拡大しやすいと考えられる。

ユーラシアイノシシは東南アジアに広く生息している。感染したイノシシの移動が感染源であれば、野生のイノシシだけで朝鮮半島をはじめ東南アジアに拡大する可能性が高い。中国や東南アジアに生息する野生イノシシには特定のダニ種がいることもあり、中国東部でのASFが東南アジアに侵入する可能性があり、この地域のブタ群にとっては新たな脅威である。

日本は空港や港湾で通常よりも多くの探知犬を使用し、感染が確認された場所から近い瀋陽と大連からの入国者に対して検疫を強化し、旅行者に中国のASFの発生を警告している。

中国の豚肉はEUへの輸出を承認されていない。一部の動物用飼料製品が中国から輸入されており、他の可能性を含めて経路の調査が行われている。中国からの英国への侵入リスクは無視できるが、ロシア西部、ベラルーシ、モルドバ、ウクライナで発生したASFと同様に、乗客の荷物に入った豚肉製品が持ち込まれ、野生のイノシシや豚がいる地域で廃棄される可能性が懸念される。個人が豚肉製品を英国に持ち込むことを阻止するための広報キャンペーンが実施されている。

 

※2018年8月10日 FOODMARKET.COM

   
 

マーケット・データ

 
 
 
 
 
 
 

ポーク・ファクト・シート