「肉の本当のおいしさ」を持つアメリカン・ビーフ

アメリカン・ビーフ リブロースのステーキ
キャベツとアンチョビ添えレシピを見る

僕は、料理人になると決めてすぐにイタリアへ渡り、国立料理学校で調理の基礎を学びました。その後、2005年に帰国し、『マンダリン オリエンタル東京』の初代総料理長になるまで、欧米の名だたるレストランで腕をふるってきました。思い出深いのは、ワシントンD.C.の『ザ・リッツ・カールトン』総料理長時代。レーガン氏、ブッシュ氏、クリントン氏という3人の大統領の就任パーティーを取り仕切ったほか、数々の公式晩餐会やファーストレディのパーティーを手がけました。30年にわたる料理人人生の中で、最高の食材を見極める目を養ってきたという自負があります。

そんな僕から見て、アメリカン・ビーフは「本物を知っている人のための肉」です。アメリカ人は、世界でも有数の肉好きな人種ですが、彼らはやはりどこの国のどんな肉よりも、アメリカン・ビーフを好みます。肉自体に濃いうまみと豊かな香りがあり、噛むほどにジューシーで深い味わいを楽しめるからです。この肉を食べて育っていると、他の肉では物足りなさを感じてしまうようですね。

アメリカン・ビーフがおいしい理由は、育ってきた環境にあります。アメリカン・ビーフは、日本では考えられないほど広い牧場で育ちます。のんびりとストレスなく成長することで、臭みのないおいしい肉質が生まれるのでしょう。また、飼料として食べているのは、とうもろこしや大豆、麦など。栄養価の高い穀物飼料をたっぷり食べることで、赤身と脂肪のバランスがとれた理想的な肉になるのです。

赤身肉ならではの「鉄分のうまみ」に注目

もうひとつ大きなアメリカン・ビーフの特長は、「鉄分のうまみ」です。これは、脂肪が少ない赤身肉ならではのおいしさで、アメリカン・ビーフ以外ではなかなか味わえません。和牛のような脂のうまみではないので、飽きがこず、たっぷりと食べられます。僕は和牛の場合、80gも食べればもう十分。でもあっさりしているアメリカン・ビーフなら、200gはペロっといけますよ。

また、今の時代、食にこだわる人は味だけでなく、栄養面にも強い関心を抱いています。その面でもアメリカン・ビーフは、栄養バランスに優れ、低脂肪・低カロリーで現代人にぴったりの食材です。カロリーを気にしがちな女性にも、自信を持ってお出しできるのがうれしいですね。

今回紹介しているレシピは、ブッシュ大統領の就任時代に考案した一品です。アメリカン・ビーフは、ジューシーなうまみを生かしてシンプルなステーキに。肉のうまみをしっかり味わうために、焼き加減はミディアムレアがおすすめです。アンチョビの塩気をきかせたドレッシングが、アメリカン・ビーフの濃いうまみをより引き立てます。
実は、アメリカ人にはアンチョビ嫌いが多いんです。そこで、アンチョビをこっそりドレッシングに使い、ステーキに添えて出したところ、みんなに「おもしろい味!」と大好評。ブッシュ大統領にも、「おいしかった」とほめていただきました。

味にクセがなく、調理法を選ばないアメリカン・ビーフは、料理人にとってとても魅力的な食材です。アメリカ在住時には、ほかにアメリカン・ビーフを味噌とみりんで漬け込む西京漬けや、ざくろソースでいただくステーキなど、さまざまなレシピを考案し、人々に喜んでもらいました。

このように、アメリカン・ビーフには尽きない魅力があります。皆さんも今晩の食事に、さっそく取り入れてみてはいかがでしょうか。

『マエストロケイズ』『セストセンソ』シェフ
山本秀正さん

1956年生まれ。イタリアの料理学校を卒業後、1983年に渡米。ビバリーヒルズの『Chaya Brasserie』などを経て、28歳でワシントンD.C.の『ザ・リッツ・カールトン』で総料理長に就任。三代にわたるアメリカ大統領の就任パーティーや公式晩餐会を手がけた。現在は三越銀座店にオープンした『マエストロケイズ』『セストセンソ』のシェフを務めるほか、食の総合プロデューサーとして活躍中。